飯嶌 由起子(いいじま ゆきこ)
4歳よりピアノを始める。
楽器店のピアノ教室でピアノの楽しさを味わった後、個人教授の先生のもとで基礎からみっちり教わる。
東京音楽大学ピアノ科に入学。音楽の奥深さを知り、よりピアノが面白くなる。
学内卒業演奏会に出演。
卒業後、子供たちに音楽の楽しさを伝えようとヤマハ音楽教室システム講師として勤め始める。
その子一人一人に合わせた丁寧なレッスンをしたいと感じていたが、短い時間の中で、レベルや上達のペースが違う複数の子どもに教える、というスタイルのグループレッスンに対し限界を感じ、退職。
その後、個人レッスンのピアノ講師として楽器店に勤務。
3歳~70代まで、楽しみながら上達する、を目標に多くの生徒さんの指導にあたる。
講師を続けるうちに、レッスンにかける時間や、使用する教材も、その子一人一人のレベルや志向に合わせて行なっていきたいという想いが強くなり、個人教室を立ち上げ、楽器店講師を退職。
生徒さんからの手紙
『弾けたら楽しいんだ!』を一人ひとりが実感できるよう、その子に合わせた取り組み方のご提案、練習の大切さをお伝えしています。
以前生徒さんからもらった手紙の中に、こんな一文がありました。
「昔はピアノを弾くことが単に楽しかったのですが、最近では演奏に今の自分の精神状態がでている気がして、ピアノを弾くと、心が穏やかになります。」
この生徒さんはその後、就職活動のためレッスンを離れることになりました。
とても残念ではありましたが、この子ならたとえレッスンという時間が無くなっても、音楽から力をもらったり、時にはなぐさめられたりして、心豊かなステキな大人になるだろうと確信し、気持ちよく送り出しました。
音楽がどこかにある暮らしは、人生をより豊かなものにしてくれます。
お子さんに、そういった可能性をプレゼントしてあげるのはいかがでしょうか?^^
子どもの頃の私
「女の子だからやらせてみようか。」
私とピアノとの出会いはこんなシンプルな理由でした。
小さい頃の私にとって、ピアノはまさしく“音の鳴るオモチャ”。
幼稚園でも古いオルガンをよく弾いていました。
「由起子ちゃんにはまだ早いかなぁ。」
その曲教えて(確か「うれしいひなまつり」だったと思います)、と幼稚園の先生に頼んだらこう返ってきて、とても悔しかった思い出があります。
小さい頃は練習がイヤだったとか、先生に怒られた、とかいう記憶が全くありません。
弾いていれば楽しかった。
小学3年生になる頃には、もう漠然と『大きくなったらピアノの先生になりたい』と思っていました。
と同時に『このままじゃ、なれないよなぁ…』ということも感じ始めていました。
4年生になり、当時師事していた先生から、「もっと本格的に勉強してみたら?」と声をかけていただき、別の先生に師事することに。
この先生には高校卒業までずっとお世話になったのですが、とにかく“褒めない先生”でした(笑)。
「良い所は何も言わないから、そのまま練習を続けるように。レッスンでは悪い所を指摘していきます。」
先生ご自身が、こんなことをおっしゃっていた気がします。
だから毎回のレッスンは、ひたすら先生のお小言を聞き、先生に怒られないように練習していく…
そんな感じでした。
それでも、ピアノをやめたい、と思ったことは一度もありませんでした。
譜読みは面倒でも、コツコツ練習して形にしていく過程、メロディーに様々なハーモニーが重なった時の響きの美しさ…単純に、ピアノという楽器の音が好き、というのもあります。
先生に言われた衝撃の一言
中学・高校と、相変わらず先生にお小言を頂戴しながらもレッスンを続け、無事に志望校に合格。
『ピアノの先生になるぞ』という憧れだけを胸に上京した私でしたが、現実はそう甘くはありませんでした。
「とりあえず指は回ってるけど、中身が無いわね」
中身って何⁇ 初回のレッスンの衝撃は忘れられません。
なんと私、作曲家が生きた時代背景やその人生などにはほとんど興味がなく、ただ楽譜に書かれている音符をひろって、表面的に弾けたつもりになっていたんです。
遅ればせながら、ここからやっと『音楽の勉強』が始まりました。本を読んだり絵画を観たり、演奏会にも行って…。
他の楽器の伴奏も頼まれるようになって、ソロで弾くのとはまた違う楽しさを知り、大変勉強になりました。
ソロの練習と伴奏の練習と…やりたいことがどんどん増え、時間が足りない‼
どうしたら短時間で効果的な練習ができるのか?
この頃から、練習方法も自分なりに工夫するようになりました。
スタートは散々でしたが、叱咤激励してくれた恩師のおかげで、学内の卒業演奏会に出演させてもらえるまでになり、4年間はあっという間に過ぎました。
ヤマハのグループレッスン
ピアノの先生になりたい、という想いはブレることはなかったのですが、就職活動をする中でヤマハのグループレッスンに出会いました。
音楽に必要な耳の力を伸ばしながらハーモニー感を身に付けていく、というレッスンで、個人レッスンしか経験のない私には驚きのレッスン方法でした。
が、何となく面白そうだな、と思い講師に。
グループレッスンでは、とにかくよく歌います。実際に指導してみて、確かに歌いながら弾くと、耳の力(音感)がより伸びやすくなるように感じました。
音感が良いと、ハーモニー感(音の重なりや響きの違いを味わう力)が身について、表現力につながりますし、譜読みのミスも減り、練習が楽しくなります。
それだけでなく、テレビや街中で聞こえてくるメロディーを耳コピして弾くことが出来たり、将来ほかの楽器にチャレンジしたくなった時にも大きな助けとなります。
ただ、この耳の力にばかり頼って、読譜に興味のない子が多くなってしまうのが難しいところでした。曲が短いうちは良いのですが、長くなってくるにつれ、レッスンで覚えて帰るにも限界があります。
またグループレッスンですから、一人にばかり構っているワケにもいきません。
『あとちょっとコツがつかめれば両手で弾けるんだけどな…』、『もう少し細かい所も指摘してあげたいな…』。
講師を続けるうち、レパートリー指導に関するモヤモヤがつのっていきました。
専門コースという上級コースも担当させてもらうことが出来、充実している部分もありましたが、グループでの発表会やコンクールなどイベントに追われ、大好きなピアノからどんどん遠ざかっていくようで…。
これは一度リセットしよう!と思い至りました。
退職という選択はしましたが、ヤマハのグループレッスン講師として勤めた数年間には、本当に多くの学びがありました。一番大きかったのは、
ただ弾けるだけでは教えられない
ということに気付けたことです。
いくら自分が難しい曲を弾けたとしても、それは指導力とイコールにはならないのです。
教えるためには、自分の中にある感覚的な部分やイメージを言語化し、子どもにわかる言葉で伝える力が必要なんだということを実感しました。
教えるって楽しい!
自分があまり苦労なくクリア出来たことでも、つまづいてしまう生徒さんもいます。
一方で、私が思う以上の表現で応えてくれる生徒さんもいます。
グループレッスンでの経験も活かしながら、どちらの生徒さんにも対応できるレッスンがしたいと思い、ピアノ個人レッスンの講師として仕事を再開しました。
3歳~70代まで、本当にたくさんの生徒さんに出会いました。
当たり前ですが、一人ひとり性格や育った環境、人生経験も違います。
皆さんいろいろなピアノを聴かせてくれました。
兄弟・姉妹でさえ、同じ曲を同じように教えたつもりでも、同じ演奏にはなりません。
だから音楽は楽しくて面白いんです!
音楽って、聴くだけでも楽しいよね。
でも弾けたらもっと楽しくなるよ。
ちょっと努力は必要だけどさ。
こんな想いを胸に、誰より私自身が教えることを楽しみながら、ピアノの魅力を一人でも多くの方に伝えていきたいと思っております。
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